医学教育と医学生気質

 医学部は6年制である。1年生で語学・生物・物理・化学・心理学などの教養科目を学ぶ。2年生から3年生にかけて解剖・生理・病理などの基礎医学を学び、4年生で内科・外科などの臨床医学を修得する。1年から4年までは病理学などの実習もあるが主に座学である。5年生から6年生前期くらいまで大学病院で臨床実習を行う。6年生後期から卒業までの数ヶ月間は国家試験の準備にあてる。6年間、毎日朝から夕方まで学び(講義の無い日は皆無と言っていい)、年2回(前期と後期)ほとんどすべての講義科目で筆記試験があり、臨床実習に入る前に試験があり、6年生で卒業試験を受けて、最終的に国家試験に臨む。

医学部の授業は、ほとんどが教員から学生への一方通行の授業である。教授の指導のもとで少数の学生が発表や討論を行い学習を進める形のいわゆる「ゼミ」はほとんど存在しない。医学は知識と実践の積み重ねの学問なので、在学中は膨大な量の知識を頭に詰め込むことに費やされる。ゼミという授業形式は必要ないのである。代わりに、3年または4年生の学生を小グループに分けて、「PBLProblem Based Learning)」と呼ばれる学習方式が行われている。各グループに提示された臨床症例などのデータを基にして、学生同士で議論し、診断などの結論に導いていく。各グループをリードするのは教員だが、司会進行を行うのみで学生を指導することはない。他の学部と比べると、教員と学生との交流は極めて少ない。

 こんなハードな生活を送っている医学生はどんな人物であろうか。国公立大学と私立大学では学生の気質は異なるが、前者について述べてみたい。医学部の学生が集団で存在すると、その雰囲気は他学部の学生とは明らかに異なる。男女ともに冷静で理性的な雰囲気で、頭が良さそうな顔をしている。最近はおしゃれな学生も多くなった。女子の中にはモデルや女優かと見紛うほど美しい学生もいる。しかし、偏差値の高い学生全体に言えることだが、エリート意識が高く生意気で我が強い。頭の回転が良く口が達者で、ずるさが目立つ学生も少なからず存在する。素直な学生もいるが少数派である。頑固で素直ではない学生を教えるのは、教員としては少々苦痛である。まあ、放って置いても勉強をするし、理解力も高く、普通に勉強すれば順調に卒業して国家試験も受かるので、大学は学生をほとんど放任している。