医学部はパワハラ天国 1
教授を頂点とした医学部の閉鎖的なピラミッド型の講座はパワーハラスメント(パワハラ)の温床となっている。教授はパワハラをして当たり前、これに耐えてこそ一人前の医師になる?
医学部はハラスメントに対する意識が非常に低く、その対策を行っていない大学は多い。大学のホームページにハラスメント対策を掲載していない大学は、学生や職員を守る気がない大学だと考えてよい。国公立大学では、東京医科歯科大学、浜松医科大学、札幌医科大学、横浜市立大学、京都府立医科大学、奈良県立医科大学である。旭川医科大学と滋賀医科大学はセクシャルハラスメント(セクハラ)対策のみ。いずれも医学部中心の規模が小さい閉鎖的な大学である。
ハラスメントの相談員や委員会が設置されていて、一応ハラスメント対策を打ち出している大学もあるが、十分に機能しているとは言えない。
ハラスメントの対象は、もっぱら研修医・大学院生・教員・講座の事務職員である。加害者は教授が多い。医学部では教員と学生の関わりが少ないので学生が対象となることは少ないが、横浜市立大学では、教授が学生の頭を踏むというとんでもないハラスメントが起こっていた。
横浜市立大学医学部教授が医学科3年の男子学生(20)を土下座させ頭を踏む。(読売新聞 2011年7月9日)
横浜市立大医学部医学科3年の男子学生(20)が、男性教授に土下座させられたうえ、頭を踏まれ、精神的苦痛を受けたとして、教授を相手取り330万円の損害賠償を求める訴えを横浜地裁に起こしていることが8日、分かった。市大は事実関係を調査中で、処分を検討する懲戒審査委員会(委員長・布施勉学長)も開かれている。訴状によると、教授は今年2月、学期末試験会場で、面識のない3年の男子学生に証拠もないのに、女子学生にストーカー行為をしているなどと名誉を傷つける発言をした。男子学生に「犯罪者」「ストーカー」などと発言。学生は身に覚えがなかったが、試験終了後に教授室を訪れると、教授から土下座を強要され、頭を踏みつけられたという。さらに、教授から、頭を丸め、反省文を提出するよう求められ、「多大な精神的苦痛と恐怖を受けた」としている。学生は3月、市大ハラスメント防止委員会に被害を申し立て、4月28日、横浜地裁に提訴した。教授は読売新聞の取材に「ノーコメント」と話している。6月20日に第1回口頭弁論があり、教授側は答弁書で、土下座させ、頭を踏みつけたことなどについて「おおむね認める」とした。また、「深く反省しており、原告に直接謝罪したほか、翌週には原告本人と両親に再度謝罪している」とし、損害賠償については「争う」としている。一方、市大人事課は「事実関係を調査中だが、真実だとすればパワハラにあたる」との見解を示している。
6月29日、横浜市立大はこの教授を停職3カ月の懲戒処分にし、監督責任を問い、60代の医学部長を戒告とした。
(共同通信社 2012年3月27日)
学生は330万円の損害賠償を求めた訴訟を起こし、横浜地裁は2012年3月26日、教授に121万円の支払いを命じた。内田貴文裁判官は判決理由で「十分な裏付けをせずに一方的に犯罪者呼ばわりした上、暴行したのは悪質。落ち度のない学生が、教授という影響力のある立場の者から、退学などと罵倒された精神的打撃は甚大だったと推察される」と述べた。
誰かのうわさを教授が勝手に誤解したのか、誰かが教授へ悪意ある言いつけを行ったのか不明だが、いずれにしても試験会場で学生の名誉を傷つけ、教授室で頭を踏み土下座させるなどもってのほかである。本来なら懲戒免職が妥当である。そして、停職3カ月という大学の処分は甘い。学生が訴訟を起こしたのは、おそらく大学の対応に不満があったからだろう。
(続く→ 医学部はパワハラ天国2 http://smedpi.hatenablog.com/entry/2014/03/23/172614)