医学部教授になるための条件 その3

(前回から続く http://smedpi.hatenablog.com/entry/2014/02/22/225323

 教授になるための第三の条件は、どの組織にも共通することだが、上司に目をかけられることである。決して教授に逆らわず、教授によく付き合い、盆暮れの贈り物を欠かさない。そして、業績がある程度あれば次期教授候補となれる。学問の世界こそ実力が第一、とはいかないのである。次期教授候補選びに無頓着というか、自然に任せる教授もいるが、概ね、教授の退官数年前から講座の人員の整理が始まる。邪魔な講師や准教授を関連病院などに転出させる。状況を見極めて、自ら出て行く者もいる。後継者とされた准教授は教授の後ろ盾を得て教授選に挑むわけである。医学部の教授候補は公募されるので、次期教授と目された者が教授選に負けることもある。原因は業績不足または根回し不足、場合によっては人格にたいするネガティブキャンペーンが原因となることもある。昔は根回しのための資金力がものをいうこともあった。不動産を売って資金をかき集めた例もあったと聞く。このように、医学部の教授選はいわゆる権力闘争の類いであるから、大概の女性には不向きな事で、女性教授が少ないことの大きな理由と言える。

ところで、教授になるための条件に「人格」が含まれるのか気になるところだが、人格が問われることは全くない。これは他学部でも同じであろう。業績が一番重要で、出身大学やキャリア(留学歴や臨床医学系であれば手術件数など)がその次である。留学は概ね半年から3年程度である。日本の医師免許を持っていても海外で医師として働くことはできないので、留学先では主に研究を行う。しかし、医学は日本の方が進んでいる分野が多いので、医師として研究者として学ぶべきことはそう多くはない。留学歴は、特に国公立大学ではキャリアとして大切であるが、教授の必須条件ではない。留学の利点はキャリアに箔が付くことと、英会話ができるようになることくらいである。 

確実に教授になれる方法はある。基礎系講座に所属することである。基礎系講座とは解剖学、生理学、生化学、病理学、公衆衛生学、法医学などの臨床以外の医学分野を担当する講座であり、教員は非医師が多く医師は少ない。基礎系講座といえども「教授は医師」との慣例があり、競争相手が少ない医師はほぼ確実に教授になれる。しかし、多くの医師は臨床を行いたいのである。教授になれるからという理由で基礎系講座を選択する者は少数である。