浜松医科大学教授がパワハラで学長を提訴・・・あっぱれ!

   浜松医科大学医学部教授がパワハラで大学と学長を訴えた。珍しいケースだそうだ。教授が大学を訴えることはあるが、ほとんどの場合は解雇などが原因だ。以下に、2015年7月8日配信のm3.comから転載する。 

   事前の相談のないままポストや教育範囲を減らす決定を伝え、恫喝するなどのパワーハラスメントがあったとして、浜松医科大学の50代男性教授が7月7日、同大と中村達学長を相手取り、550万円の損害賠償請求を、静岡地裁浜松支部に申し立てた。同日、浜松市内で教授と塩沢忠和弁護士らが会見した。男性教授は、恫喝などによるポストや教育権限の移譲について、「正規の議論の形跡もなく独裁」と指摘している、同大と中村氏はともに7日夜の時点で、「訴状が届いておらずコメントできない」としている。

    男性教授の弁護士、塩沢忠和氏は「権限の濫用にあたる」との見解を示した。当初は中村氏個人に対する訴訟となる予定だったが、非公務員の国立大学法人職員は、国家賠償法上の「公務員」として扱われる判例がある。公務員扱いの場合、警察官の職務執行などと同様に免責となり、「請求そのものが棄却される可能性があるため、大学も対象とした」(塩沢氏)という。ただ、訴状では、中村氏への損害賠償請求については、民法の適用を求めていて、男性教授も中村氏個人に対する責任を追及したい考え。

   訴状などによると、中村氏から、男性教授へのパワハラは2005年ごろに開始。准教授ポストや教育内容を減らされてきたほか、恫喝と受け止められる言動があったという。2014年4月 には、事前の相談がないまま、准教授のポストや教育範囲の減少、教室のスペースの明け渡しなどを求め、「准教授が辞めた際、別の准教授の任用を許可しない」などの恫喝があったという。

 パワハラの動機については「(男性教授と関係の深い)別の教授と、中村氏の関係の悪化」(男性教授)があり、「中村氏の個人的な恨み・怒りの矛先が、男性教授に向かった」(訴状)としている。男性教授は、「(継続的なパワハラで)無気力感や絶望感を感じる」(訴状)ようになり、PTSD不眠症を発症し、今年1月に浜松労基署に労災を申請し、「上司とのトラブル」が認定され、支給が決まっている。男性教授らは、大学にパワハラの調査も求めていて、大学には調査委員会が設置されている。現在は、教育は実施しているが、「最近1年間、研究は手がついていない」と影響を訴えている。

 塩沢氏は、大学におけるポストや授業範囲などについて、「不文律があり、関係する教授の意見を聞かないで決めるのはあり得ない。学長の持っている権限の濫用」と指摘。男性教授も「中村氏の要求は正規の委員会等で議論された形跡もなく、まさに独裁」と批判している。実際の意思決定の権限については、学長に一定の裁量がある点を認めながらも、塩沢氏は「過度の精神的な負担を負わせる対応に問題がある。また、目的についても、不当な目的があれば、原則不法行為として認められる」としている。

 教授による学長に対する訴訟提起は、全国的にも珍しいケースとみられ、塩沢氏は「聞いたことがない」としている。司法の場に持ち込んだ理由について、「大学における人生でこれだけ(いじめを)やる人はおらず、心理的に追い詰められてPTSDを発症した。また、部下や教育内容を講座の長として守らないといけない」と述べた。

 会見においては、国立大学法人の在り方への疑問も出た。現在、浜松医科大学の学長選挙では、教授選挙が廃止され、意向調査を実施。意向調査を経て、経営協議会と教育研究評議会から選ばれた学長選考委員会が、最終決定する。塩沢氏は、経営協議会と教育研究評会のメンバーを学長が選定できることを疑問視した上で、「中村氏は(権限の強さから)何をやってもよいと思い込んだのではないか」と指摘した。

    浜松医科大学は昭和49年に開校した比較的新しい国立の医科大学である。1990年代に大学設置基準の規制緩和が図られて、平成16年(2004年)に国立大学が法人化され、浜松医科大学国立大学法人となった。その後、全国の公立大学も次々と法人化され、かつての国公立大学は私学に近い大学となった。法人化によって大学の設置・運営の自由度が広がる反面、自己点検・自己評価が義務づけられることとなった。また、学校法人には理事長が必置のため、学長=理事長となった。(私立大学では理事長と学長は別である)つまり、教育・研究の長である学長が経営・事務の長ともなり、学長の権限が増したのである。

    権力の座に就いた者がその力を乱用し、恫喝によって弱者を従わせることはよくあることだ。一旦恫喝の味を知るとやめられない。麻薬と同じだ。法人化した国公立大学で、学長が権力を乱用しやすいのは、浜松医科大学のような単科大学に近い医科大学である。医科大学と言っても他の医療系学部が付いている医療系総合大学の形を成していることが多いが、他の医療系学部はあくまでもおまけである。学長は必ず医学部の教授から選出される。

    医学部の教授には権力志向がものすごく強い人が多い。何をしても許されると考えている人がいる、特に人事において。学長に選任されて権力を掌握したとたん、本領発揮となる。大学の将来を考えての言動ならば我慢もできるが、私利私欲のため、自身の講座の勢力拡大のため、浜松医大のように個人的な恨みでの職権乱用のケースなどが、ままある。自身の講座の出身者を学内外で優遇し、講座を新設しては教授として据えたり、学長の任期を勝手に延長してしまったり、etc.である。

    浜松医大のケースは、おそらく学内に反学長の支援者が多数いるのであろう。だから、現役の教授が学長を訴えることができたのだと思う。大学にパワハラの調査も求めているが、うまく機能するかどうか疑問である。私の持論だが、大学のホームページに詳しいハラスメント対策を載せていない大学は、間違いなくハラスメントを放置する大学である。浜松医大のホームページには全く載っていない。

    浜松医大だけではない、全国の愚かな学長の戒めとするためにも、ぜひ勝訴してもらいたいと思う。