医学部は不正な金銭が多い? その2

前回(http://smedpi.hatenablog.com/entry/2014/07/22/110823)から続く

③研究費の不正使用

 医学部は研究費が豊富である。まず、大学の資金から各学部に研究費が振り分けられるが、医学部は他の学部よりも高い。特に国公立大学は高く、講座の人数によって金額は異なるが、講座ごとに年間数百万円の研究費が割り当てられ、人件費、物品購入、出張旅費などに使うことができる。他に、個人や研究グループに助成される競争的資金がある。代表的なものが文部科学省の科学研究費助成事業厚生労働省の厚生労働科学研究費である。いわゆる科研費と呼ばれ、いずれも公募によって採用された研究に対して、その主任研究者に資金が提供される。前者は文系、理系を問わずにすべての学部の研究が対象となるが、後者は研究対象が保健・医療関係であるから、医療系大学特に医学部、国立試験研究機関、国立高度専門医療センターなどが公募の対象となる。助成金額は1年間当たり数百万~数千万円で期間は1~3年である。

 科研費のような公的資金は使い勝手が非常に悪い。まず、年間の助成金が交付されるのが4月ではなく夏以降であるから、4月からの数ヶ月間は公的資金はゼロである。交付されたなら、やむを得ない理由がない限り、年度内に使い切らなければならない。やむを得ない理由とは、大震災の発生により、器械や器具の納品が年度内に間に合わなかった、などである。余った助成金を次年度に回して、次年度の助成金だけでは買えない高価な実験器械を買うこともできない。何が何でも単年度使いきりである。余ったならば、本来は国に返還するのが筋なのだが、努力して獲得したお金を返したくはない。そこで、研究者たちは自分たちの裁量で自由に使える方法を考えた。いわゆる不正経理である。

不正経理の手口

 医学部では臨床医学基礎医学を問わずほとんどすべての講座で不正経理が行われていた。その手法は3通りある。1つ目はカラ雇用、2つ目はカラ出張、3つ目は業者へのお金のプールである。カラ雇用はアルバイトの給料の一部を講座にバックする形で行われる。例えば、アルバイトの勤務が週3日なのに週5日勤務したことにして、週2日分の賃金を講座のものとする。公的資金は個人で管理するのではなく、大学の学務課などの事務方が管理している。講座と学務課は所在が離れていることが多いので、アルバイトの実際の勤務状況がばれることはない。アルバイトの銀行口座に振り込まれた給料を自身で週2日分引き出して教授などに現金で渡す場合と、アルバイトが採用になった時に銀行に普通口座を開設させ、その通帳を教授が管理し、その口座から、例えば週3日分の賃金を引き出して現金をアルバイトに渡し、残り2日分を教授などが手に入れる場合の2通りのやり方がある。

 (続く http://smedpi.hatenablog.com/entry/2014/08/03/212554