医学部教授になるための条件 その1

医学部というとどんなイメージを思い描くだろうか?歴史と実績に基づいた教育システム、高度で洗練された教育内容、朝から晩まで勉学に勤しむ優秀で礼儀正しい学生、診療や研究に勤しむ医師、冷静かつ頭脳明晰で人格者である教授、といったところだろう。しかし、これらのイメージは間違っている。医学部は数ある学部の中で、最も偏狭で利己主義に満ちた閉鎖的な学部である。

その特殊な組織のトップに立つ教授とはどのような人物であろうか。医学部の教授は様々な学部の中で、最も頭が良くて優秀な人たちであると思われているようだが、意外とそうでもない。業績が多いから優秀だから教授になれるとは限らない。何よりも教授になるために一番大切な条件は所属する講座の教授との年齢差である。教授が定年を迎える頃に、自分が教授に適する年齢であること。教授と年齢が近ければ所属の講座で教授にはなれず、他の大学の教授選に応募しなくてはならない。教授選はどの大学も公募であるが、その大学に所属する者が圧倒的に有利であり、他大学からの応募は相当な業績がないと不利である。教授になれなかった者は、頃合を見て開業するなり、しかるべき地位で勤務医になる。あるいは、看護学科などの他の医療系学部の教授になることもある。この場合は公募ではなくコネ採用となるが、他の教員と比較しても業績などは相当にある場合が多く、医師ということで重宝される。最近の医療系学科の増加に伴って、このパターンは意外と多い。

ところで、医学部の教授選挙というのはどのようなものか。単純に業績だけで選ばれるのではない。根回しが大切である。選挙権があるのは教授だが、教授間には派閥があり、根回しのために相当なエネルギーが必要である。山崎豊子原作の「白い巨塔」という小説をご存じだろうか?TVドラマでは、唐沢寿明が扮する内科の財前助教授が、根回しのために料亭やクラブで教授に接待を行ったり、高価な絵画を贈ったりする場面があった。実際の根回しはどうなのだろう?残念ながら私は経験がないのでわからない。

教授選考の次期は、一般的には教授の退任の数ヶ月前あるいは後より始まる。どの大学も表向きは公募を行う。応募者は一次選考の書類審査でふるいにかけられて、23名が最終選考へ進む。一次選考は、業績と、外科の講座であれば手術件数などで判断される。二次選考は教授会でのプレゼンテーションを行い、教授らの投票によって次期教授が決定される。当該講座の準教授が公募に応募した場合、十分な業績があれば、ほとんど次期教授に決定である。二次選考に残った者が複数いて実力が拮抗しており、彼らの支持者が医学部の対立する勢力であった場合、権力闘争が繰り広げられる。二次選考は応募者の業績というより、支持者の勢力の大きさで決まると言っても良い。

(次回へ続く http://smedpi.hatenablog.com/entry/2014/02/22/225323