卒業生が誰も行かない医学部の「修士課程」

 大学規制緩和以前の医学部では大学院は博士課程のみであった。医学部は修業年数が6年であるから、大学を卒業すると修士相当の教育を受けたことになる。従って、修士課程は医学部には存在しなかった。規制緩和以降、ほとんどの医学部に修士課程が設置された。医学部卒業者が修士課程に進むことはあり得ないので、修業年数が4年の大学卒業者または業年数が4年以上の専学校卒業者などが入学対象となる。大学や専門は問わず、文系卒でもかまわない。入学後は基礎系講座に所属する者が多いが、(心理学を修めた者が精神科学講座に所属するように)臨床系講座に進む者もいる。しかし、当の医学部卒業者が全く入学しない修士課程が医学部に存在することは非常に奇妙で、他の学部ではありえない状況である。

 また、博士課程は医学部においては概ね4年間であり、多くの医学部卒業者が入学するが、他学部の修士課程修了者も多く入学する。23割くらいは他学部出身者つまり非医師である。そして博士課程終了後には「医学博士」となるが、「医学博士」が医師とは限らないわけである。

 「博士」の種類は「理学博士」「農学博士」「薬学博士」など様々あり、どの学部の博士課程を修了したかによって博士の名称が異なる。「医学博士」は聞こえが良く格が高いというイメージを持つ人が多いと思う。しかし、博士の種類に優劣はない。むしろ医学博士は一番チョロイ「博士」ではないかと思われる。