札幌医科大学教授の懲戒処分
札幌医科大学は平成27年5月25日付けで50代教授の懲戒解雇処分を行った。教授の解雇はとても珍しい。札幌医大のホームページを見ると、解雇の理由について次のように記載されている。
平成27年5月25日付けで次のとおり、本学教員に対する懲戒処分を行いましたので公表します。
1 被処分者
医学部 教授(50歳代)
2 処分の量定
懲戒解雇
3 処分年月日
平成27年5月25日
4 事案の概要
(1) 同教授は、道内医療機関に対して行った兼業(診療支援)について、その結果 (回数、所要時間、従事内容、報酬額)を大学に報告しなければならないにもかかわ らず、その一部しか大学に報告していなかった。また、一部の医療機関における兼業1回当たりの報酬額を大学に過少に報告した。
(2) 同教授は、本学給与及び大学に報告のあった兼業による報酬のほかにも、本学から得られる給与を大幅に超える給与収入があるにもかかわらず、大学の兼業許可を得ず、また報告もしていなかった。
(3) 同教授は、大学が設置した調査委員会からの文書による照会や事情の聴取に全く応じず、また、大学がこれらの照会や聴取への協力を業務命令として命じたにもかかわらず、従わなかった。
(4) 同教授は、出張期間中に出張先及び用務地から移動して兼業に従事したにもかかわらず、兼業の事実を報告せず、また、旅行命令の変更など必要な手続を怠っていたことにより支給が認められない旅費を受領したものがあった。
(5) 上記各項をはじめ、本学の信用を著しく失墜させる行いがあった。
5 本学の対応
平成26年末に学内外から、同教授が本学兼業規程に違反して兼業を行っているとの通報がありました。理事長から同教授に事実関係を質したところ、同教授からは違反はないとの回答があったため、具体的な資料の提示を求めたにもかかわらず、これに応じなかったことから、同教授の兼業実態を確認することを目的として、平成27年1月28日、学外委員を含む調査委員会を設置し、調査を進めてきました。
その結果、上記4の事実が確認され、調査委員会は4月1日付けで大学に報告を行いました。
理事長は、この報告に基づく懲戒処分の審査を本学教育研究評議会に付託し、評議会における審議結果に基づき、このたび、処分を決定したところです。
6 管理監督責任
本件に関して管理監督責任者である医学部長及び附属病院長に対し、文書による訓告としました。
兼業はすべての大学教員に認められている。大学教授がコメンテーターや司会としてテレビに出演できるのはそのためだ。医学部では他の学部にはない「診療支援」という兼業がある。大学以外の病院で診察・手術・当直などを行うことである。大学病院の医師は、医師ではなく教員として採用されているので、給料はその職務内容に対してかなり低い。診療支援がなければ医師は誰も大学には残らないだろう。手術や当直の金額はコメンテーターのそれよりもずっと高い(おそらく)。特に田舎に行くほど相場が高くなる。北海道は無医地区が多く医師の偏在も大きいので診療支援は貴重であろう。診療に来てもらわないと地方の医療機関は困るのである。だが、兼業が主になって大学の診療がおろそかになってはいけないので、ほとんどの医学部では兼業に制限を設けている。
制限を設けていても、大学の給料よりも兼業の金額の方が多いというのは珍しくはない。教授クラスになるとはるかに超えることもあるだろう。この元教授は「度が過ぎた」「脇が甘かった」「教授は何をしても許されると思っていた」ということだ。
元教授は心臓外科の専門である。医学界は狭い、大学が伏せても噂は広まる。札幌医大心臓血管外科の4代目教授である。札幌医科大学付属病院 心臓血管外科(旧 第二外科)>教室の沿革 あの日本発の心臓移植を行った講座である。北海道で2例目の心臓移植が行われた。日本初の心臓移植「和田移植」の46年後であった。その裏側で行われた責任転嫁。 - 医学部教員の独り言
それにしても、懲戒解雇とはずいぶん重い処分である。兼業に関して同様の処分が必要ならば、解雇される教授はたくさん出ると思う。大学の発表で腑に落ちないのは(5)上記各項をはじめ、本学の信用を著しく失墜させる行いがあった。という点である。どんな行いなのだろう、なぜ記載がないのか。ハラスメントか?この手の問題は内部告発で発覚するのが一般的だが、内部告発はハラスメントが絡んでいることが多い。だが、前回も書いたように、医学部はハラスメントの加害者には寛容なので、信用を著しく失墜させる行為ではありえない。 ならば、業者との癒着や賄賂なのか?
もうひとつ腑に落ちない点は、医学部長と附属病院長に訓告という懲戒処分が行われていることだ。告発があったにも関わらず何もしなかったからなのか。なぜ学長は責任を取らないのか?
兼業は表向きの理由で、札幌医大は何かやばい事を隠しているのではないだろうか。