医学部は不正な金銭が多い? その5 (プール金の実態)

(前回から続く http://smedpi.hatenablog.com/entry/2014/08/10/200017)

 不正経理の3つ目の手法は業者へのお金のプールである。ほとんどの医学部で行われていた。教員などがある特定の業者へ依頼して、提示した金額に見合った見積書や請求書を作成してもらい、架空の発注を行う。そして購入金額が大学から業者に払い込まれる。実験室で使用される試薬などの様々な消耗品を大学の事務方がいちいち納品の確認を行うことは少ない。また、架空発注される物は大体決まっているので、業者は架空発注用としての検品用の品物を常備していることもある。

 業者にプールされたお金はどうのように使用されるのか?好きなときに欲しい物を自由に買うのである。この場合、欲しい物というのは研究用の物品である。研究用の品物を買うのであれば、なぜ架空発注する必要があるのか?公的資金の使い勝手の悪さが原因で、このようなプール金制度を慣習化してしまったのである。資金は年度内に使い切るのが原則であるが、研究資金としてきっちりと使い切るのは不可能に近い。また、研究者というのは研究資金がいつか無くなることを恐れている。余剰の資金を貯金感覚でプールしておけば安心で便利である。例えば、必要な実験機材が500万円するのだが、年度末に100万円しか残っていない。次年度は400万円の資金が当たっているが、機材の購入には足りない。そこで、100万を使わずにプールしておけば次年度の資金と併せて500万となり、機材を買うことができるわけである。また、実験用の試薬などが急に足りなくなることは多々あり、すぐに購入する必要がある場合、業者に積もりを提出してもらい、公的な大学では入札が必要であったり、とにかく事務的な手続きだけで数日かかってしまうことがある。プールしておけば電話一本で購入できる。また、資金はその研究のためにしか使えない。どんなに資金が余っても、全く別の研究には使えないのである。しかし、大学の教員は1人が複数の研究テーマを抱えていることが多く、そのすべてに十分な資金があるわけではない。研究者にとって使い勝手の悪い公的資金を便利で合理的な使い方に変えるのがプール金制度である。

 しかし、研究者の中にはプール金を研究のためではなく、大阪大学のように私的な目的で使う不届き者もいる。業者に預けたプール金を研究室や個人にキックバックさせる者もいる。この場合、気の毒なのは業者である。業者はどんな形にせよ利益になるから不正に加担するわけだが、キックバックされたのでは元も子もない。

(続く)